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12/1/8 COMIC CITY大阪87の新刊です。
いやもうにょたで一番描きたかった話だったんでもうやりたい放題でしたよヒャッハー!
表紙サンプル、本文の別サンプルはpixivに載せてますので良かったらご覧下さい。

拍手[1回]

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大阪新刊は燐雪にょたでございますー。
以前書きました『花飾りと花の笑み』の加筆と表題の小説(書き下ろし)の二本組です。


拍手[6回]

まいどおなじみ(にするな)りんゆきにょたでゴザーイ(をい)


++++++++++++++++++++++++++




「あーもう、やっぱり寝ちゃった」
 傍ら、気持ち良さそうに鼾混じりの寝息を立てるその姿に溜め息を吐くと、傍らからくすりと笑い声が聞こえた。
「燐、ほんとにお酒弱いよね」
「まあ、ね」
 ソファにかけてあったハーフケットを取り上げてその肩にかけながら、赤らんだ顔を覗き込む。お屠蘇代わりに用意した悪酔いしないという質の良い吟醸酒だったというのに、今日の燐にとってグラス一杯が限界量だった様だ。お節をもって遊びに来たしえみの分を含めた年越し蕎麦を用意し、それを食べ終えて少しずつ飲んでいただけだというのに年を越して一時間程しかその意識は持たなかった。
「でも、お料理用意して、お掃除も殆ど燐がやってたんだよねぇ。疲れちゃったんだよ、きっと」
 その言葉に、返す言葉も出ない。
 年末ぎりぎりまで在った仕事のせいで、今年は家の事を殆ど手伝えなかった。いや、今年というか、自分の壊滅的な家事能力のお陰でそう言った事は全て任せっきりなのだけれども。
 掃除位は出来るのだが、洗濯は兄に『皺になるからやるな』と叱られた。兄が洗う方が型くずれしないのでそのまま任せていたりするがそれを出雲に知られてこっぴどく怒られたのだが何故なのか未だによく解らない。
 そして相変わらず料理の方は上達しないまま。簡単な調理は何とかこなせるようになったけれどそれは蒸すだけとか茹でるだけとか煮るだけとか混ぜるだけの簡単なモノでしかなく、おせち料理などの手間をかけるものは相変わらず遠い次元の出来事なのだ。
「僕も出来る事なら手伝いたいんだけど」
「仕方無いよ、燐の唯一の特技だもんね」
 笑いながら、空いたグラスや皿を纏めて流しに持って行くと、しえみは雪緒の方を向いてあ、と思い出したように声をあげる。
「ねぇ、雪ちゃん」
「なに?」
「雪ちゃん、燐の事大好きでしょ」
 がたん、と大きな音がして酒瓶が倒れた。
 幸いにも中は空っぽで蓋もしてあったから惨事は防げたが、それを起こす事も忘れて雪緒は目を見開いたまま口をパクパクとさせている。
「え、ちょ、な、なに、いって」
「バレバレだから今更驚かなくても良いのに」
「ばれっ?」
「うん。ばればれ」
 神木さんや勝呂くんはどうか知らないけど、と言いつつしえみは倒れた酒瓶を持ち上げた。
「燐も燐で雪ちゃんの事すっごい大好きだもん。どんな話してても雪がーゆきがーっていつもそればっかり」
 そうして、フォレストグリーンの瞳を閃かせて雪緒を覗き込んで。
「雪ちゃん、燐は雪ちゃんが好きだよ」
 確か、確か、だ。
 彼女は、兄に想いを告げたのではなかったか。
 そして、兄はそれに一体なんと言って返事を返したのかを自分は今だ、知らない。
「ずっと家族のままでいいって言うならそのままで良いけど、そうじゃないでしょ?」
 だからてっきり雪緒は二人が付き合いだしたのだとばかり思っていたのだけれど。思えば任務以外であう機会は今までとあまり変わりはしないし、その現場に自分が共にいる事の方が圧倒的に多かった訳で……
「燐は、一生言うつもりないよ。きっと、絶対一生言わずにそのまま抱えてく」
「しえみ、さん」
 まさか、兄、は。
 彼女の想いに否と、答えたの、か。
「兄さん、は……」
 声は、震えていたかもしれない。しえみの掌が、そっとそれを受け止めるように雪緒の手に重ねられた。

「自分は、この手で一生守らなきゃならない、大切な人がいるって。それは小さい頃からずっと決めてきた事で、それを曲げる事は出来ない。自分の想う人はたった一人だけだから、だから答えられないって言われた」


 ちいさいころから
 ずっときめてきた、こと


 その言葉に、雪緒は胸がとくりと鳴って、そのままちくりと痛んだ。
「その言葉がね、ほんとに燐らしいなぁって思ったから、何も言えなかった。だから今まで通りにお友達でいようねって、燐にお願いしたの」
 まだこどもだった頃なら、これは笑ってそうだねと言えたのだろうか。
 でも、今はもうこどもではなく、それぞれがその足でしっかりと立って先を見据えている。
 しえみと燐と雪緒と、三人それぞれに抱えた想いは何時しか膨らんでその形を変えていて。
 そして、しえみは一足先にその形を見据え定めていたのだから。
「雪ちゃん、怖がってても始まらないよ。踏み出さないと始まらない。わたしにそう教えてくれたのは雪ちゃんと燐だから」
 ね?と笑うその顔は、何処にも厭味などない。
 彼女は、本気で幸せを望んでくれているのだ。
「しえみさん……」
 もし、この想いが叶ったとしてもその先には破滅もしくは終焉しかないのに。
 それを知っているからこそ、二人揃って先には進めないでいるというのに。
 だからこそ、手を取って立ち向かえと言われているようで。
 重ねられた掌が、暖かくて。
「ありがとう」
 だからこそ、痛かった。
 進むには余りにも、鋭い刃のようなその路を。
 切り開く事は出来るのだろうか、と。
 微笑み返してくれる幼なじみの真直ぐな想いすら、今の雪緒には余りに重くそして甘く仄暗い誘いでしか、なかった。






++++++++++++++++++++++++++


ほんと毎度関西はにょたばかりで申し訳無い…… 
りんゆきにょたなのに燐が寝たままですんません。
実は途中から狸寝入りなんですけどね(笑)   

拍手[14回]

2011/1月インテ新刊
にょたの上にパンストパロとかどれだけカオスになろうというのか……



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「うぉおらぁぁぁあぁ!起きろ!おぉきぃろおぉぉぉぉ!」
 朝からけたたましいと言うべき音階の声がこだました。
 かんかんと鳴り響くのは握りしめたフライパンで、張り上げる声の出所は薔薇色の唇。そして纏うはふりふりフリルの真っ白エプロン。そんな古典的ともいえる新妻風情を醸し出しているというのに。
「ぐぉらぁぁぁぁぁぁぁ!朝だってんだろぉぉぉぉぉぉぉ!飯抜きにすんぞおまえらぁぁぁぁぁ!」
 その言葉は粗暴極まり無い。
 その肩にのっかっている子猫はそれをいつものように受けてにゃあああと声を上げ、足下にいるモップ犬は器用に前足で耳を塞ぎ煩いと言わんばかりに目を閉じる。
 毎朝毎朝同じ光景…と言う訳でもないのだが、号令のように響くこれはある意味一日のはじまりとも言えて。いらつくというよりも何処か楽しい気分でもあるのだ。
「うおおおおい、おはよーさん」
「おせぇ!」
 新聞をバサリと言わせながら大あくびで現れたのはこの教会の────そう、ここはこの街の外れに在る教会で、場所はその居住区である────神父でもあり、カンカンとフライパンを鳴らしていた少女の養父でもある男、藤本獅郎その人だ。
「うっせーな、昼じゃねーからいいだろ。って燐、雪緒はどーした」
「……しらね」
 ぺちぺちと頭に当たり続ける新聞を奪い取ると、燐と呼ばれた少女はぷいとそっぽを向いてキッチンへ向かう。
「うお?何お前らまた喧嘩?」
「ウッせぇよジジィ!とっとと座れよ準備すっから!」
「あらやだやぁねぇ若いわねぇ」
「てめぇ!一品減らすぞ!」
「へーへー、おー、今朝もうまそうだなー」
「ったく……」
 食卓には、湯気を上げる出来たばかりの朝食。
 そぼろと葱入りの卵焼きに鱚の一夜干し、大皿に盛られた白菜と人参の胡麻酢和えにたっぷり根菜のお味噌汁、ご飯も炊きたてつやつやほくほくだ。
「ほんとお前、いい嫁さんになれそうだよな」
 整えられた食卓を眺め味噌汁をひと啜りして獅郎は溜め息を吐く。きちんと出汁を引いて作られた食事は本職と引けを取らないレベルなのだ。加えて家事もそれなりに出来るのだから、この口の悪さと喧嘩っ早ささえなければと思いはするのだが。
「飯だけ作れれば嫁になれるって訳じゃねーだろ?」
 本人にはそのつもりは全く無い上に、そこに悪意も悪気もない。全て素だ。
 育て方を間違えたかとも思うのだけれど、素直に育ってくれたのは事実なのでその辺には目を瞑る。悪い部分はあろうとも、心は優しく性根は真直ぐ、嘘もろくにつけない程なのだ。
「ま、そうだがなぁ……お、この鱚うめぇな」
「それまだあるから何だったら後で酒のつまみにしていいぞ」
 にっこり笑う笑顔が、何よりもそれを雄弁に物語るではないか。
 この子はこれでいいのだ、そう思って卵焼きを口にする。少し甘めの味付けは全体のバランスを見ての事なのだろう。何処かほっとする味に安堵の息をはきかけたその瞬間。
 ぎぃ、と鈍い音を立ててドアが、開いた。
 のそり、という擬音でも聞こえてきそうな状況で見せた姿に、獅郎はうんざりという顔をする。寝起きが悪いのは解っているが、これを世間様には見せられないと思うのは親心なのだろうか。
 形状記憶でもされているのかというような髪の毛はさらさらとしているし、いくら眠そうにしているとはいえその顔は整っているからむしろ気怠さも相まって逆に色気すらある。加えて結構なスタイルの良さであるから見目はとても麗しい。
 しかし、その頭の中は見た目通りには行かないという訳で。
 どこか眠た気な瞳がぐるりと室内を見渡す。そして、その視線がキッチンへ向かい、ぴたりと動きを止めた。





+++++++++++++++++++++++++

拍手[18回]

ナニがあったどうしたという勢いでりんゆきにょた熱大暴走ですんません。
燐←姫な感じで。


+++++++++++++++++++++++++






「ほんとに、さらっさらだよなぁ……」
 するり、と指先が髪をすり抜ける。
 じりじりと外を焼いていた日差しが少しずつ緩み始め、辺りは僅かずつその色を柔らかくしていく。
 遠くから、かすかに人いきれのざわめきと神楽が聞こえている気がした。
「頭が重くならなくて…そんで邪魔にならなくて崩れない、だったな」
「うん」
「まあ、任せとけ。一番可愛くしてやる」
 傍らに置かれているのは深い瑠璃色に白く百合の意匠が抜かれた仕立ての良い浴衣。そして何本かの細いリボンと、細やかな刺繍の艶やかな帯。
 襦袢を纏って椅子に座ったまま、雪緒は髪を梳く兄の手に全てを委ねていた。

 何に置いてもがさつな兄ではあったが、こういった細かなことは小さな頃から得意で。特に雪緒の髪の毛は途中から全て兄の手で整えられていたのだ。
 ただそれは中学に上がるまで、ではあったが。
 中学位から修道院に居着かずふらふらとしていた兄は時折しか髪を結い上げてくれなくなっていた。しかし、何故かこういったことに関して雪緒はどうしても不器用で……実際、女子が好むようなビーズ遊びやリリアンなどは全くもって苦手。料理は壊滅的な腕前で、編み物に至ってはマフラーがどう間違ったかコースターに成り果てる始末だ……髪を切ろうと考えていた時、偶然現れた兄は前触れも無くぼそりと呟いたのだ。

 きれいだから そのままにしとけよ

 それ以降、雪緒の髪は背を半分程覆うあたりで留められている。
 そんな事を覚えているのかどうかは知らないが、こうしてまた二人で過ごすようになってから、雪緒の髪を結い上げるのは燐の仕事になっていた。
 普段の生活時は雪緒でも出来るようなバレッタを使って纏めたりする程度のことだから手を煩わせることは無いのだが、何処かに出掛けるとか、ちょっとおしゃれをしたいとか、そんな事を思うとき、知ってか知らずか兄は自然と声をかけてくれて。
 今日も、それは当たり前のように行われている。
「ねぇ、なにするつもり?」
「んー。編み込みかな。細かくやってリボンも入れてうまく纏めてやるよ。お団子とかだとなんか浴衣にあわねー気がする」
 そう言いつつも、手に髪束を少しずつ取っては編み上げて行くそれには迷いも何も無く。右側から持ってきた髪をカチューシャでも作るかのように編み込みつつ左に持っていく様は中々堂に入っている。
「ねぇ、兄さんは浴衣着ないの?」
「あ?なんで?」
 鏡に映る、指の動き。
 もう、こどもの頃とは違う骨張ったそれが、髪を滑る。
「一緒に行くのに僕だけ浴衣ってなんかいやなんだけど」
 何処かくすぐったいその感覚は、何時しかその意味を違えて。
 掠めるように触れる指先に、あらぬ思いでこころは揺れる。
「……どうしてもか?」
「できれば」
 うーん、と思案する声と共にヒュ、と空気が薙いだ。
「これ、隠すの大変なんだけどよ」
 そう、兄には悪魔としての身体特徴故に尻尾がある。普段は腰履きのボトムからはみ出させたそれを腹部に巻き付けてシャツで隠すなどしている様だが、浴衣はそれなりに難しいようで。多少思案顔になっているのを横目で見てから、仰向くようにして兄を見上げた。
「なんとかしてよ」
 ね?と首を傾げてみれば、困ったように笑う燐が、見える。
「わーったよ」
 ひょいと元の位置に頭が戻され、ピンに括りつけた細いリボンを髪に差し込みながらそう言って我が侭を赦すその姿に、思わず意味を取り違えそうになって、しまう。
 違うのだ、と。
 兄にとって、自分は妹でしかないのだ、と。
 何度も何度も、なんど、も。
 跳ねるここをろ押さえ付ける呪文を唱えているというのに。
 そんな事を知らぬ兄は、いつもの様に笑ってくれる。
 その笑顔一つ、言葉一つで。
 自分の胸は、張り裂けそうだ。
「浴衣青いから、飾りのリボンは白のレースにする。眼鏡、ラベンダーのフレームのあっただろ、それに変えろよ?」
「……どうして?」
「その方が絶対に、可愛い」
 きっぱりと、潔い程に断言されたその言葉に思わずかぁ、と音でも立てるかのように頬が染まるのが解った。
 しずまれ、しずまれ。
 そう願うのに収まるどころかますますそれは熱を上げる。
「どうした?なんか熱いぞ?」
「な、なんでもないよ!」
 触れているのだ、それに気付かれない筈は無くて。
 心配そうな声と共に、兄の指がそっと首筋に触れた。
「────っ!」
 途端、雪緒の身体が跳ね上がる。
「お、おい?どうした!ってか熱いぞやっぱり熱あるんじゃねーのか?」
 こっちの気持ちなどお構い無しに、兄はそのまま掌を額に重ねようとしたものだから。
「……に、いさん、の」
 つい、うっかりだった。
「バカぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 伸ばした腕は、兄の胸を押しやって。
「ぬおっ、お、おおおおおおおおお?」
 思い切り良くその身体を向こうの壁へと転がしていたのだ。
 ごん、と痛そうな音が部屋に木霊して。
「あで、て……」
 ごろん、と。
 頭を抱えた燐が床に転がって、いる。
 やってしまった、と思いつつも余りのことにフリーズしてしまってそこから動けない雪緒の眼に、むくりと起き上がりつつ自分に視線を向ける兄が映る。
 ぶち切れるか怒鳴るかはするだろうな、そう覚悟したというのに。
「あー……驚かせちまった、か?」
 その声は、何処か心配げなもので。
「悪ぃ、いきなりやるなってこないだいってたのに忘れてた」
 そっと、そっと。
 触るぞ、という低めの声と一緒に額に乗せられた掌は、やっぱり優しかった。
「熱は、ねぇな。あとで汗だけ押さえとけ」
「う、ん……ごめん」
 本当に勝手な、自分の抱えている気持ち。
 兄にとってはきっと負担にしかならないであろうこの想い。
 ただのきょうだいの、そのままの気持ちであれば良かったのに。
 胸が、たったこれだけのことでも高鳴ってしまう。
「なーに謝ってんだよ。ほら、あと飾り付けるだけだから浴衣着ちまえ」
 髪は、いつのまにか仕上がっていたようだった。
 複雑に、細さの違う編み込みが重なり合い、所々で花のように形取られて。
 その中に編み込まれた濃紺の細いリボンに縫い付けられたラインストーンが時折光を跳ね返す。

 ああ、やっぱり。
 僕を一番綺麗に仕上げてくれる。

 そう思うのは、きっともうこの人を兄という存在としては見られなくなってしまっているから。
 だれよりも、なによりも。
 愛しく、大切で。そして────愛して、いるから。
 決して知られてはいけない、この想い。
 それを隠して、包み込んで。
 まだ、妹の顔で笑える筈だから。
「……兄さん、着せて」
「はぁ?」
 浴衣を持ち上げ手渡そうとしていた燐の眼を、真直ぐに見つめて雪緒は笑った。
「着せてよ」
 きっと、その手は自分を一番綺麗に彩る。
 きっと、その手は自分を誰よりも理解している。
 だから、その手に全てを委ねるのだ。
「……いいのか?」
 伺うようなその理由は、さっきの自分の態度だろう。自分のこの、兄に取っては意味も無い感情の為に取ってしまった態度。でも、それがただの気まぐれだと思ってもらう為にも、雪緒は笑う。
「うん」
 頷き、にっこりと微笑んで。
 今は、まだ笑い返す事が出来る。
 何時か、その傍らに自分ではない誰かが立つことになるであろう、見えざるその先に辿り着くその日まで、は。
 妹という、己の本心が望まぬ位置で、自分は花のように笑ってみせる。
 仕方無いな、と優しく笑って藍の色が肩にふわりと掛けられた。
 遠くから聞こえる神楽は、何故だかセルロイドの洋燈のようにどこかぼんやりと耳に届いて。
 いっそこのまま、いられたらいいのに、などと不埒な考えさえ呼びそうになる。
 何時か、この想いが知れる時が来るのであればいっそそのまま絶えてしまえたら等と、不穏な想いすら引き起こす、けれど。
 ふいに触れる、暖かな指先と。
 しゃらりと響く衣擦れの音が、意識を現実に引き戻す。
「ねぇ」
「あ?」
「手、繋いでくれる?」
 やさしいやさしい、たったひとりの、かたわれ。
 今はまだ、自分の手だけを握っていて欲しいから。
 突然の言葉に燐は驚いてはいた。でも、すぐに頷いてくれて。
 お前はいっつも唐突だよな。
 そう笑いながら真白な花飾りをそおっと髪に差し込んでくれた。





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